スキルやテクニックとしての聞き方や話し方ではまったくなく、自分や相手を「尊厳を持った一人の人間」として扱う方法、という感じ。沖縄の少女の調査を続ける研究者や、ユマニチュードの創出者など、さまざまな人へのインタビューも交えて書かれているけれど、他者との向き合い方がガチな人しか出てこないのが効いている。
そもそも今の世の中、きちんと聞いたり話したりしているつもりでも、例えば共感(しているようなリアクション)を求められたり、話したいことがあっても「わかる〜」という適当な共感しぐさでいつの間にか話を持っていかれたり、職業によっては「聞いてくれるかも」「話がうまいかも」みたいな余計な期待を背負わされたり、プライベートでも「あなたは聞き役なんだから」みたいな立場を言外に要求されたりすることはたくさんあって、何も恐れず安心してコミュニケーションを取れる場はあまりにも少ない。私自身、「人に話す」ということに信頼を置いてないところもある。
著者は「その人の話をその人の話として聞く」インタビューセッションをやっているが、それはちゃんと聞いてもらえないのが普通だからこそ成り立つのだと思う。でも、そうでまでして話を聞いてほしい人がいるわけだし、この本を読むと、そもそもその人のままでいられること、そういう場が用意されていること自体がもう立派なケアなのだよなあと。
本来は言葉にしにくい、できない要素がたくさん含まれていると思うし、うわべの情報だけでは腹落ちしないことがたくさんあるので、あとは全身で体感できるようなコミュニケーションを実際に取ってみよ、ということなのでしょう。